François Boucher 'L'Amour désarmé'
フランソワ・ブーシェ '矢を取り上げられたキューピッド'
1751
タイトルの通り、キューピッドから矢を取り上げるヴィーナスと、それを見上げて困っているキューピッドを描いた作品です。
この作品は、当時「ヴィーナスの眠り」と共に、ルイ15世の愛人であったポンパドゥール夫人の私邸に飾られていました。「ヴィーナスの眠り」は私室、特に寝室に、当作品は公室に相応しいように描かれたようです。
ブーシェは、この作品において、物を多く描かないことで構図の単純化を図っています。そのため、鑑賞者の目は、絵の主題である矢を取り上げるヴィーナスの裸体に自然と向けられるのです。
キューピッドの矢は、対象に強い恋慕を抱かせる事が出来ます。この作品の描かれた当時、ポンパドゥール夫人は王の公然の愛人となっていました。 このことから、この作品は、彼女の自分を正式な妻に迎え入れない王への非難、あるいは恨みの感情が込められていると考える事が出来ます。
ブーシェは、同主題の作品を、ルイ15世の浴室の装飾のためにも描いています。
François Boucher 'Venus désarme son fils'
フランソワ・ブーシェ 'キューピッドの弓矢を取り上げるヴィーナス'
こちらの方が、「矢を取り上げられたキューピッド」よりも先に描かれているようです。王のために描かれた主題の作品を、ポンパドゥール夫人も欲したと考えることも出来るのではないでしょうか。
〔参考文献〕
*千足伸行監修「ブーシェ・フラゴナール展」1990、印象社
*東京都美術館編集「ブーシェ展図録」1982、日本テレビ放送網
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